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国家の品格よりも政治家の品格

2006年1月31日

宇佐美 保

 

 先の拙文《国家の品格について(5)(国家より個人の品格)》に次のように記述しました。

 

米国産牛肉のBSE問題に関する、小泉氏の

 

責められるべきは米国側だ。なぜ日本が責められるのか、分からない」

 

との答弁も、責任の他人転嫁そのものです。

今回のように、検査漏れの牛肉が米国から輸出される事態は、前もって、米国での検査体制をしっかり検査し指導して、日本側がOKを出してから輸入再開するのが手順です

 そして、この検査指導を行った後に今回の事態が発生したのであれば、一つは日本側の検査指導が不十分であったこと、もう一つは米国側が日本の指導をきちんと守らなかったことの2点となり、どちらか一方だけの責任とは言い切れません。

ですから、責められるべきは米国側だ。なぜ日本が責められるのか、分からない」と答弁する小泉氏は愚か者と思えてなりません。

 勿論、

前もって、日本側が検査指導を行わず「米国を信用していた」と言うのでは、
今回の耐震偽装事件同様の「性善説を信じていた」との無責任答弁そのものです。

 

 誰でも、間違い失敗はありましょう。

でもその間違いを真摯に詫び反省する事から新たな発展進歩が生じるのでしょう。

そして、次第に「品格」が備わってくるのではないでしょうか?

 

 「靖国参拝問題」にしても、「中国韓国の内政干渉こそが問題」と、

非を他者に求め自己の正当化を図るような小泉氏


から、「品格」のひとかけらも私は感じません。

 

 そして、本日の毎日新聞のページには次のように記述されています。

 

中川昭一農相は30日の衆院予算委員会で、米国産牛肉の特定危険部位混入問題に関連して、政府が輸入再開前に現地調査を行うとしていた閣議決定の方針を守らず、再開決定後に調査したことを認め、陳謝した。農相の答弁に反発した野党が同委を退席し審議が一時中断。農相が再答弁することで同委は同日夕に再開されたが、民主党は農相の辞任を要求。委員会は再び中断した。

・・・

しかし、午後の同委では「食の安全を守るとの答弁書の趣旨は逸脱していない」と答弁を修正したため野党側が反発。民主、社民、国民新の3党が同委を退席し、予算審議は一時空転した。・・・

 

 「政府が輸入再開前に現地調査を行うとしていた閣議決定の方針を守らず」米国産牛肉を輸入して、違反となる背骨部分が混入していただけでも大問題なのに、「食の安全を守るとの答弁書の趣旨は逸脱していない」とまで、発言する中川昭一農相には「品格」のひとかけらも無いようです。

 

 そして、日本側がやるべき事(事前調査)を行わずに、「責められるべきは米国なぜ日本が責められるのか分からない」と国会答弁していた小泉首相の責任は中川氏以上に重大です。

これでは、米国に全く失礼ではありませんか!?

(それとも、米国側の圧力で、事前調査ができなかったのですか?

だとしたら、日本は米国の属国ではありませんか?!)

 

 ここまで書いて中断していたら、次の朝日新聞記事(1月31日)が入ってきました。

 

 安倍官房長官は夜の予算委で「閣議決定では当時の農水省と厚労省の考え方を内閣として是とした。その後、認識が変化した」と説明した。小泉首相もこれらの答弁について「これで結構だと思う」と述べ、問題はないとの認識を示した


 こんな言い逃れが通用しないのが次に控えています


 ところが、朝日新聞社が入手した政府の内部資料によれば、政府は答弁書の閣議決定以前の段階で米国産牛肉の輸入再開を12月12日に決定しその後に査察団を米国に派遣する方針を固めていたことが分かっている。

 30日の中川氏ら政府側の答弁はこうした点には触れず、「閣議決定は当時の認識を示したもので、その後の状況が変わった」と繰り返した。
・・・
「輸入再開前の現地調査が必要」との答弁書を政府が閣議決定したのが昨年11月18日。その後、「方針を変更した」というのが中川氏の主張だ。


 これだけだと、何のことか良く分りませんが、次の記事で”やっぱりブッシュのポチなのだ!”との怒りがこみ上げてきます。

 

では、再開前の現地査察は本当に「当初方針」だったのか。実は、それ以前に、日米両政府が輸入再開前の査察は実施しないことで合意していたことが分かっている。

 同年11月16日、京都で開かれた日米首相会談。朝日新聞社が入手した、会談に向けた政府内資料で、査察団派遣は輸入再開後と記されていたのだ。資料には、12月12日の輸入再開決定や、その後の査察団派遣など実際にとられた解禁への段取りが書き込まれている。


 全く驚くべきことです。

小泉氏は、「査察団派遣は輸入再開後」との資料で「京都で開かれた日米首相会談」を行ったのです。

小泉氏は、「日本国民の食の安全」よりも「米国畜産業者の利益(ブッシュ大統領へのサービス)」を優先していたのです。

 


 更に、中川氏は、次のような発言もしているのです。

 

 中川氏は、約5時間の中断後に再開した30日夜の予算委で、閣議決定後の状況の変化として(1)日本向け輸出プログラムの認定作業を日本側も調査できることがわかった(2)輸入解禁以降でなければ、現地の調査に入れないことが判明した(3)食品安全委員会の答申でも、査察は輸入再開の条件とはされていない――との点を挙げ、輸入再開を「総合的に判断した」結果だったと説明した。

 「輸入解禁以降でなければ、現地の調査に入れない」などの事があってよいのですか!?

買手は日本です。

何故、買手の意向が優先されない事態を黙認しているのですか!?


 こんな政治姿勢で「責められるべきは米国なぜ日本が責められるのか分からない」と国会答弁していた、

小泉氏を何故日本国民は支持するのですか!

米国民が小泉氏を支持するのなら理解できます!

 

 そして、嘘の答弁で国会を愚弄する、「中川昭一農相」「安倍官房長官」が小泉首相の跡を継ぐのでは、この国はどうなってゆくのでしょうか?

 

 

 その上、次の記事(朝日新聞1月31日)も目にしては、お先真っ暗です。

 

麻生外相の発言(要旨)

 私自身があそこで一番問題だと思うのは、祭られている英霊の方からすると天皇陛下のために万歳と言ったのであって、総理大臣万歳といった人はゼロですよ。ぼくはそう思うね。だったら天皇陛下の参拝なんだと思うね、それが一番。何でできなくなったのかと言えば公人、私人の、あの話からだから。それをどうすれば解決するかという話にすれば答えはいくつか出てくるんですよ。ぼくはそういった形にすべきだと思っているんで、答えがいくつかないわけではありませんが、そういう問題にしてやっていかないと。

 

 天皇陛下のために万歳と言ったのであって」「だったら天皇陛下の参拝」と発言する麻生外相の「心の貧困さ」を感じます。

このような発言は天皇陛下に対して失礼であると、お感じにならないのでしょうか?

 

 そして、この麻生発言に対して、安倍官房長官は、次のような反応です。

 

 安倍官房長官は30日の記者会見で「参拝は私人としての行為に位置づけられるが、天皇陛下という立場にかんがみ、社会情勢など諸般の事情を考慮しながら慎重に検討し宮内庁で対処してきている」と述べた。

 

 又、肝心の小泉首相は次のようです。

 

小泉首相は31日未明、首相官邸で記者団に「これは麻生さん自身の考えだから、とやかく言うことはないと思います」と述べた。「天皇が参拝した方がよいと思うか」と問われると「私は誰に対しても、どなたに対しても、行けとか行くべきとか言うことはいたしません」と語った。

 

私は、天皇陛下が靖国神社を参拝なさるか否かの問題以前に、

天皇陛下のために万歳と言ったのであって」「だったら天皇陛下の参拝

との論理を組み立てて、その論理の組み立て方が、どれほど天皇陛下に対して失礼なのかを認識できない、麻生外相、安倍官房長官、小泉首相の「心の貧しさ」、「品格の無さ」に愕然とするのです。

(この件に関しては、次の拙文にても記述したいと存じております。)


 

(補足)

 

 1月31日のテレビ朝日『報道ステーション』で麻生外相は、米国産牛肉の輸入に関して、したり顔で次のように語っていました。

 

 米国は、30ヶ月未満の牛肉を生産しているが、日本は20ヶ月未満の牛肉を輸入しようとしている。

従って、輸入前にはその日本向けのラインは立ち上がっていないのだから、日本から検査団が出かけても検査出来ない。

その為に、輸入後に査察団を派遣することに、決めていたのだから問題ない。

 

 この談話に古舘氏は反論しませんでした。

私は、反論します!

小泉氏は盛んに民営化を口にしていますが、この麻生談話は民間会社では全く通じない屁理屈です。

 

 民間会社が、ある製品を新たなラインで製造される製品を購入する際は、購入する前にその新たなラインで製造される過程を製造側と購入側双方での立ち会い検査をします。

ですから、今回の米国産を輸入する前に、日本の検査団が出向き、米国で日本向けの20ヶ月未満の牛肉製造ラインを立会い検査すべきだったのです。

(百歩譲っても、今回の輸入牛肉の製造過程を、
日本側査察団は立会いで査察しているべきだったのです。)

 

 週刊ポスト(2006.2.10)の「食卓の危機 米国産牛肉」(チェーンソーで頭部を割り脊髄が飛び散る・・・安全管理はこんなにズサン「現地リポート」)の記事の一部を抜粋させて頂きます。

 

米国の牛肉解体方法に強く警鐘を鳴らすのは、BSE問題に詳しい東京大学名誉教授の山内一也氏だ。

「・・・私は、見てすぐに″違反″だとわかる脊柱混入よりも、目に見えないような微小な脊髄のかけらが飛び散った肉が流通してしまうことのほうが、危険度は大きいと考えています」

 ところが、危険な米国産牛肉を輸入時に水際で防げるのかとなると、かなり心もとない。

 農林水産省の回答を聞くとなおさらだ。

 「輸入時には、原則として積み荷の05%を無作為に抽出して検査します。(脊髄の飛沫などに関しては)検査の基本は目視なので、目で確認しつらいものはチェックが困難になります」(成田空港動物検疫所)

 今回の脊柱付き牛肉が発見される前に、日本に″入国″してしまった米国産牛肉は約730トン

「うち、脊柱がついている可能性がある575トンについては、輸入業者で、全箱検査をする要請しました。が、業者の手元を離れたものについては、検査は出来ず、消費者の食卓に出回ってしまった牛肉が存在する可能性は否定できません」(厚生労働省食品安全部監視安全課)

 

 麻生氏たちは、私達の食の安全をどう考えているのでしょうか?

麻生氏を初め小泉内閣の面々(政治家たち)は、国民の安全よりも、国会答弁の安泰そして、自分達の閣僚としての座、議員の座の安泰しか頭に無いようです。



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